何を見ればいいの!?ヨーロッパの教会を10倍楽しむための3つのポイント

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旅行ノウハウ
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はな

2019~2021年までスペインで語学留学。2021年秋からはイタリアで美術史修士課程。スペイン語 Dele C1, 英語 IELTS 6.5。社会人留学、語学学習ときどき旅行についてまとめています。趣味は美術館・教会巡り、ポストカード・古紙幣収集。

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ヨーロッパ旅行の定番観光スポットの一つと言えば教会!ですよね。

ヨーロッパの多くの街には、中心に聖堂が建立されていることが多く、その街のシンボルとなっています。

でも、正直、そんな教会を訪れても「大きい!」「すごい!」「綺麗!」といったシンプルな感想しか出てこない…

なにがどうすごいの?どんな価値があるの?ということを知っていれば、教会見学がより楽しくなるかもしれないですよね。

そこで今回は、これまで120以上の大小様々な教会を巡ってきた筆者が、教会見学で注目すべきポイントについてまとめてみました!

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教会見学のポイント

ヨーロッパ旅行が好きだけど、何に注目して教会を巡ったらいいかわからない…そんな人も多いと思います。

教会の建築様式とか難しそう…と思っている方も多いと思いますが、なるべく簡潔に写真付きでまとめてみました。

実際、教会は時代の中で破壊されたり、継ぎ足されたりしてきていることが多く、一つの教会の中でも「ここは〇〇様式」「でもここは××様式」ということはよくあります。

そして、様式が正確にわからなくても教会見学は楽しめます!

ただ、それぞれの様式の成立過程について基礎知識が少しでもあれば、「あ!これってもしかして!」という発見があるかと思いますので、簡単に触れていきたいと思います。

教会の楽しみ方①:建築様式

教会の建築様式については、語りだすと止まらなくなってしまう…というか以上に長くなってしまいそうなので、簡潔によく見かける様式をご紹介していきます。

ロマネスク様式

実際ロマネスク様式として完全体が、観光地に多く残っているわけではないです。

しかし、増改築の過程で、「一部分だけロマネスク様式」みたいなパターンはよくあるので、簡単にご紹介します。

注目ポイント
・分厚く暗い壁に直接施された彫刻
・以降消滅してしまう独特な柱頭彫刻

ロマネスク様式の特徴は「丸い天井」と「分厚い壁」です。

初期キリスト教会では、天井は平らな板を重ねて作られていましたが、ろうそくの使用による火事などが相次いでいました。

11世紀になると、石を半円形に組み合わせることで天井部分を造るという建築技術が生まれ、このような柱・天井を基礎とした教会が多く建立されました。

これが、ロマネスク様式です。

ポイントは、上部の重さを支えるために壁が分厚くなっている点です。

ロマネスク様式では、分厚い壁を利用し、壁に直接彫刻をするスタイルで装飾が発展しました。

ゴシック様式

フランスやドイツの有名観光地の中心のカテドラルはゴシック様式であることが非常に多いです。

フランスのノートルダム大聖堂や、ドイツのケルン大聖堂などですね!

皆さんが「教会」と聞いて思い浮かべるものはたぶんこれです。

注目ポイント
・外部の「トゲトゲした梁」
・ステンドグラス
・背が高く開放的な構造

ロマネスク様式から時代が少し進むと、教会の外部に向かって重さを分散させる技術が生まれました。

教会の周りにぐるっとある「クモの足」みたいな部分は、単なる装飾ではなくて、建築技術的な理由によるものなのです。

この支えの部分を「フライングバットレス」日本語では「飛び梁」とも呼び、この発明は教会建築の可能性を大いに広げることになりました。

さらに、ロマネスク様式では天井は「半円形」で作られていましたが、「尖頭系ヴォールト」と呼ばれる形が採用されるにつれて、より細い柱でも安定した建設が可能になりました。

これを設けることにより、上部の重みを柱だけで支える必要がなくなり、その結果、天井が高く、そして壁が薄くなったのです。

壁が薄く済んだおかげで、窓を大きくとれるようになり、キリスト教美術の代表とも言える「ステンドグラス」が誕生しました。

ルネサンス様式

さらに時代が進むと、「ルネサンス」と呼ばれる時代が訪れ、「バランスの良さ」や「調和」に重きを置いた教会建築が登場します。

ミラノやフィレンツェの大聖堂(ドゥオモ)はこれに当たります。

注目ポイント
・見ていて心地いいバランス
・写実的な彫刻、装飾

ゴシック期には、どにかく巨大に、とにかく背を高く設計された教会ですが、ルネサンス期になると高さ、左右のバランスなど、全体に調和のとれた心地よいデザインが多く登場します。

遠近法の発見や、ヒューマニズムの再考察が行われたこの時代には、教会の装飾もより写実的なものに変化していきました。

バロック様式

バロック期に入ると、豪華絢爛な内装が好まれるようになり、祭壇や内部の細やかな装飾が増えていきます。

注目ポイント
・光、雲…見えないものも具現化!
・ストーリー性がある
・ダイナミックな構図

旅行をしているとゴシック聖堂の次によく見かけるのがこのバロック聖堂です。

ゴシック聖堂のように外見のゴージャスさはありませんが、内部はキンキラキンのド派手な装飾が施されていることが多いです。

バロック期の特徴は「ダイナミック・ドラマックな構図」と「すべてを具現化」している点にあります。

ルネサンス期に「調和」が重視されて、安定した構図が好まれていた反動(?)で、バロック期にはあえて動きのある場面を描く作品が多いです。

教会装飾においては、絵と彫刻を合わせ、全体で一つのストーリーを構築する構図がよく見られます。

現実と天上世界の間をなるべく近づけ、教会を訪れた人により「ダイレクトに」聖性を伝えるための努力とも言えます。

もう一つの特徴に、光や雲など、実体のないものを物質として表現したという点が挙げられます。

個人的にキンピカすぎる…と感じますが、「光」をどう表現するかは、この時代の彫刻家にとっては大きなテーマだったようです。

教会の楽しみ方②:窓

ではここからは、どのようなポイントに注目して教会を楽しめばいいかについてご紹介します。

先述した通り、教会の「窓」というのは、建築技術に依存していた部分も多く、ロマネスク様式ではほとんど重要視されていませんでした。

筆者はそんな素朴なロマネスク窓を愛しているのですが…

ゴシック教会の窓

観光中心地に多いゴシック教会は、とにかく「窓」が見どころです。

特に、ゴシック様式の多くの教会は、ステンドグラスを取り入れているため、光の当たり具合によって様々な表情を見せてくれます。

特に注目してほしいのが、「バラ窓」と呼ばれる部分!

教会の顔ですね!

これは一般的に正面入り口の上部にある円形の窓で、放射状に広がるデザインが施されています。

この部分は教会の内部に入って振り返ってみないと見えない部分なので、ちょろっと見学しただけだと見落としてしまいやすいのですが…

それぞれの教会に個性があって、なかなか面白いです。

「仕掛け」としての窓

教会の窓は、ただステンドグラスで装飾をするために活用されただけではありません。

天上世界とのつながりを意識させるように作られた、「仕掛け窓」もあります。

例えば、スペイン・トレドの大聖堂の主祭壇裏では、彫刻→絵画→窓視界誘導が行われ、見ている人がまるで天井世界へ誘われているような構図になっています。

識字率の低かった時代には、「巨大な聖書」としての役割の果たしていた教会では、見る人に感覚的に訴えかける仕組みが多く取り入れられていました。

特にバロック様式では、差し込む光をよりドラマチックに利用したり、トレドの大聖堂のように天井世界をイメージさせたりなど、効果的な活用が目指されました。

教会の楽しみ方③:彫刻

教会装飾の代表!と言えば、彫刻。

この彫刻ももちろん、様式の変化とともに大きく変改しています。

ロマネスク様式の彫刻

ロマネスク様式では、壁が分厚かったために、装飾の多くは「壁に直接彫る」という手法が主流でした。

古代ギリシア・ローマ時代に一度完成されたヒューマニズムは、ローマ帝国の崩壊とともに忘れられ、ロマネスク様式では力強く直接的なデザインが採用されていました。

写実的ではない、いわゆる「下手」な彫刻です。

下手…なんて説明したらいいんだろう…ヘタウマ…?

枠組みの中にギュウギュウに詰め込まれた聖人や悪魔たちがなんとも不思議な感覚で、見ているうちに癖になるんです…

余談
バルセロナにあるカタルーニャ美術館には、ロマネスク様式の壁画、彫刻が多く所蔵されており、好きな人には最高の場所です。

ゴシック様式の彫刻

ロマネスクから壁が徐々に薄くなっていくにつれ、壁に彫刻されていた装飾たちは、だんだん居場所を失うことになりました。

そこで、彼らは壁から飛び出し、「一体の彫刻」として独立するようになるのです。

この「彫刻の独立」が完了がルネサンスによって完了させられますが、過渡期にあたるゴシック聖堂では、半分身体が聖堂に埋まっている半独立型の聖人像などが多いです。

この彫刻の独立は単なる「スペースがなくなった」という現実的な事情だけでなく、二次元→三次元への、表現の挑戦でもありました。

ルネサンス期に「遠近法」が発見される前、特にロマネスク様式においては、重なり合う人々を効率的に表現するために、聖人の頭の上に他の聖人を重ねる的な乱暴な構図は、割とあるあるでした。

そこから、徐々に現実界にあるものを三次元で表現する技術の向上があり、それに伴い彫刻たちにも、写実的な「実体」が与えられていったのです。

バロック様式の彫刻

ルネサンス様式で完全な写実主義が完成された彫刻は、バロック期には「ダイナミックさ」の追求が始まります。

今風に言えば、「盛る」という感じでしょうか。

バロックでは、結構「盛り」ます。

特に注目してみると面白いかな~と思うのは、「布のリアルさ」と「彫刻の手」です。

これは若干筆者のフェチも入っていますが…

ヨーロッパで素晴らしい美術作品をたくさん見ていると、それに慣れてしまって忘れがちになりますが、彫刻って全部「石」なんですね。

バロック様式では、「一瞬を切り取って石で表現する」ことを全力で目指された時代なので、その臨場感を感じながら見学すると、より楽しめると思います!

教会の楽しみ方④:音の反響

最後に、教会の内部に入ったことがある人はわかると思いますが、音がめっちゃ反響します。

これは単に建物が大きいから音が遮断されるだけではありません。

あえて、そのような構造が採用されているのです!

教会で行われるミサでは、「讃美歌」がとても重要であるため、讃美歌が教会内に効果的に反響するように計算されているのです。

この「反響」は、ただ音が響けばいいだけではありません。

音が反芻してしまうと、讃美歌が綺麗に響かないため、全体に豊かな音量で広がり、かつ音が反響しすぎないように建設されています。

内部を歩いてみると、自分の足音が静かに教会全体に広がるのがわかります。

その音の響きを感じるのも、教会の楽しみ方の一つです!

まとめ:窓、彫刻、音!

長々と教会について語ってきましたが、筆者が言いたかったことは、ヨーロッパの教会についたら「窓」「彫刻」「音」に注目してみてください!ということです。

それぞれの様式に特徴や見どころはあれど、すべてを理解することは不可能です。

しかし、教会は文字が読めない人に対してもキリスト教の教えを伝えるための場でもありました。

つまり、わからなくても「感じられる」ような仕組みが多く施されているということです!

ここで挙げた三つのポイントを頭の隅に入れて、ぜひ教会巡りを楽しんでください!

以上、教会巡りで注目すべきポイントでした。

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