語学学習の方法には様々なものがあり、ネットにも情報が溢れています。
そんな中でも、とある人が「文章の書き写しがおすすめ」と言っているのを目にし、「へえー楽しそう」と軽い気持ちで初めてみたらドはまりしました。
苦手だったはずの長文読解で、なぜか毎回時間があまるようになり、「いつの間にこんなに読むの早くなったの!?」と自分でビックリ。
今回の記事では、「写経」という勉強法を30日以上続けてみて実際に感じたことを、率直にまとめてみました。
「写経」は本来仏教用語でお経の書き写しを意味しますが、語学学習者界隈では「原文を丸写しする」学習法を指してこの言葉を使うようです。魔訶般若波羅蜜多心経…ではありません!
語学学習方法「写経」の効果
まず、結論から。
「写経」を継続することで得られる効果は以下の5点です。
①時制を意識して読めるようになる
②一文が長くてもひるまなくなる
③関節詞を瞬時に掴めるようになる
④日本語を介さずに読めるようになる
⑤流し読みせず精読する習慣がつく
筆者は現在英語とスペイン語を同時学習しており、この二つの言語で写経を行っています。
ここに書くことは英語で取り組みたい人が多いと思うので、基本的には英語の前提で話を進めますが、おおむねすべての言語に共通していることだと思います。
「ディテール」を意識できる
英語の長文を読むとだいたいの内容は理解できるけど、実際に設問を前にすると、似通った選択肢から正答を選ぶのが苦手…という人もいるのではないでしょうか。
それはズバリ、長文を「流し読みしている」からです。
例えば、「時制の一致」など、日本語にはない文法ルールは特に日本人にとって難しいポイントですが、ある程度想像力があれば、時制を正しく理解できていなくでも長文は読めます。
しかし、文章を「正確に」理解し、「わかったつもり」を脱するためには、「ディテールを掴む力」が必要ですよね。
文章をただ読み流すだけでなく、書き写すことで「あれ?ここなんで過去形なんだろう…」と「なんでここ三単現のsがついてるんだろう…」と、小さなポイント一つ一つと向き合うことができます。
「読んだ気になる」ことが減る
先ほどの内容と関連しますが、写経を行うことで、「読んだ気になる」ことが減ります。
長文を多読している人は特に、文章を読むことに慣れ、「理解していない」ことにも慣れてしまう可能性があります。
筆者はまさに、まさに!これでした。あはは
理解度70%が平常運転だったので、いつの間にかそれに慣れてしまうんですよね。
全文日本語に訳してみると、「えっこんなことも言っていたんだ」と気づくことがあったり、小さなキーワードを見逃して真逆の意味に理解してしまっていたり…
文法の知識はあっても、なあなあに読んでいるから、見落とす。それに慣れる。正確に理解できない。
そんなループから抜け出すために、写経はぴったりでした。
長文に慣れる
考え方は人によりますが、筆者は「多読」よりも「精読」が語学力アップの近道だと思っています。
「読むスピードが遅い…」と悩んでいる人も多いと思いますが、一発で文章の意味をきちんと理解できていれば、読むスピードは絶対にあがります。
何度も同じセンテンスを読まないと理解できないから、時間がかかってしまうのです…たぶん。
しかし、長文をただ読み続けるだけでは、文章が頭の中を流れてそのままどこかに行ってしまいます。
「手書きで書き写す」ことは、労力がかかりますよね。だからこそ、頭に残るのです。
言葉の一つ一つをよく見る習慣がつけば、長文を読む際に「詳細」を見るようになります。
結果、以前よりも長い文章でも混乱せずに読み進めることができるようになりました。
写経はこんな人におすすめ
「写経」という勉強法が向いている人は、以下のような人です。
①手書きで文字を書くことが好き
②基礎文法を理解している
③長文流し読みしてしまう
④2択の選択肢でいつも迷う
⑤慌てて読んでミスしてしまう
写経は「中級者以上」の学習者におすすめです。
文法を理解せずに写経を始めると、内容理解に時間がかかってしまうと思います。
これは、「初心者がやっても意味がない!」ということではなく、写経に時間を使うよりも、まずは文法問題などで基盤を固めた方が効率的に進められる、ということです。
中級ってどれくらい!?
と思われるかもしれませんが、「辞書ありで制限時間なしなら、文章をほぼ完全に理解できる人」は「写経」をすることでワンランク上のレベルを目指すことができると思います。
また、「写経」という勉強の形式上、文字を書くのが極端に嫌い…という人は、正直つらいと思います。
パソコンで打つ方法もありますが、タイピングに慣れている人だと考えずに文字をコピーできると思うので、やはり手書きの方が効果は大きい気がします。
手書きで文字を書くことが好きな人は、きっとハマります!
写経に向いている題材
つづいて、「写経」に向いている題材についてです。
ポイントをまとめると以下の3点。
①原文である(翻訳でない)
②ニュースや雑誌(小説ならセリフ少な目が良い)
③自分が好きなもの!!
とにかく、「自分が好きなもの」を選ぶのがおすすめです。
ほんとこれが一番大事です。
このご時世、ネットでいくらでも何語でも情報をゲットできます。なんならウィキペディアでもいいと思います。(情報が正しいかは別として…(笑))
また、原文であるということも大切です。
なぜか現在村上春樹をスペイン語で読んでいますが、「日本語的な言い回し」を無理やりスペイン語に言い換えた感がとっても強いので、原文のものがおすすめです。
ちなみに筆者が実際に継続して写経を行っているのは、スペインで発刊されているナショナルジオグラフィックの歴史雑誌「HISTORIA」です。
英語だと、ノーベル賞を受賞したカズオ・イシグロさんのNever Let Me Goを読んでいます。
ハリーポッターシリーズも英語学習者に人気の教材です。
小説を読んでいても、「あれ?ここなんかよくわからなかったな」と思うところは、一度自分で紙に書いてみるようにしています。
必ずしも全文書き写さなくでも、ポイントでわかりづらかった文章を書いてみるだけでも十分だと思います!
まだ英文を読むことに慣れていない人は、左右に英語と日本語が書かれているものを選ぶのがおすすめです。
写経のやり方
ここまで写経は「ただ書き写すだけ」と言ってきましたが、より効果的に写経を行うための手順についてご紹介したいと思います。
なお、これは筆者の個人的な方法なので、ご自身の好みや苦手に合わせて工夫してみて下さい!
①文章を3~4文まとめて音読する
②わからない単語をざっと調べる
③全文ノートに書き写す
④理解できない部分は日本語に全訳する
写経の目的は「文章の構成」に慣れ、詳細をキャッチアップする力をつけることです。
必ずしも正確な訳をする必要はありませんが、ある程度は知らない語彙については調べながら進めています。
音読は学習環境にもよりますが、可能であれば絶対行ってほしいです!
特に英語は、文章を「音として理解する」ことも大切だと思います。
文章を読みながら正しい音を理解しているかを確認することで、目と耳が同時に英語に馴染みます。
日本語訳は、やってもやらなくでもOKです。
筆者の場合、「ここの文章意味が通じないかも」と思ったときだけ立ち止まってじっくり分解します。
写経のコツ:英語編
ここからテクニック的なことになります!
英語で写経をする際、どのような点を注意すればいいか?と考えると、筆者が注意いているのは、「スペル」「動詞」「関係詞」の3つのポイントです。
英語は単語のつづりと発音が異なる言語なので、筆記式の試験では「スペルミス」が起こりやすいです。
写経して文章を書き写す際は、一つ一つの単語のつづりを正しく書くことに集中しています。
「動詞」というのは、「どれがその文章の『主語に対応する動詞』か」を考えながら書き写すということです。
関係詞節や接続詞がたくさんあると、本物の動詞がどれかわからなくなってしまうことがあります。
いずれの文章でもどれが動詞かを考えながら進めることで、文章の全体像をつかむスピードがあがります。
「関係詞」は、「どこからどこまで」が「何を修飾しているのか」を理解して進めることを意識しています。
写経のコツ:スペイン語編
一方、スペイン語はスペルのルールが簡単なので、英語と違ってこのストレスは少ないと言えます。
その代わりスペイン語の写経では、「時制・活用」と「前置詞」をとにかく意識しています。
「活用」というのは、スペイン語は主語に合わせて動詞の活用が変化する言語なので、「なぜこの活用になるのか?」を『文法的に』説明できるかどうかを考えながら書き写しています。
時制についても、直接法か接続法か?接続法の場合、用法は何か?などを一つ一つ考えます。
スペイン語の接続法はかなり厳格なルールに則って使用されます。
自分が人に説明する立場になったつもりで、丁寧なチェックを心掛けています。
結論:「読んだつもり」を卒業する!
写経の方法について偉そうに色々書いてきましたが、筆者はしがない一学習者にすぎません。
ただ、半信半疑で初めて見た「写経」という学習法で、継続してみることで確かに手ごたえを感じたので、それをシェアしたくてこの記事を書きました。
全文書かなくても、気になったところを書くだけでもいいと思います。
大切なのは「文構造を分解する意識を持つ」ことです。
気になる方は、ぜひこの学習法に挑戦してみてください!
以上、語学学習法「写経」についてでした。
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